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ちぐま日記 bis ~フランス・ナントより

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ふたりめ出産記 その3

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1950年以来の暖冬が一転、2月に入った頃から大寒波に襲われたヨーロッパです。
ナントでもある日雪が降り、気温が低いので積もった雪がずいぶん長い間とけずに残っていました。
ここ数日はもうすっかり寒さも和らいだけれど、その頃の写真を。
雪模様のナントはめずらしく、新鮮で、なかなかよかったです。
道の悪い中通勤、通学した人は大変だっただろうけど。

忘れた頃に更新される出産記、その2の続きです。





陣痛が耐えられないくらいきつくなってきたので麻酔をお願いして分娩室に移動することに。
麻酔を打ってもらうには、子宮口の開きが何センチの段階であろうと、
分娩室へ移動しなければなりません。
これは、麻酔のチューブを背中に刺しっぱなしになるので、
麻酔後はベッド(というか分娩台)から動けなくなるため。
陣痛待機室からすぐ横の分娩室へのそりのそりと移動。
これが夕方の5時45分くらい。
陣痛の間隔はますます短く、そして陣痛そのものはどんどん長く苦しくなってくる。
「麻酔ぃー!!麻酔ぃぃぃぃぃー!早ぐーーーーーーー!」
と、口にすらしないけれどすがるような思いで分娩台へ横になり、
新たに陣痛モニターをとりつけたところで助産婦さん、
「麻酔医を呼ぶには最低10分の陣痛モニターのデータが必要です」
がーん!さらに10分も待つノー!オーノー!そんなことならもっと早く頼めばよかったよ!
さらに陣痛と戦う羽目に。

陣痛の痛みって、生理痛の1000倍とか、鬼の金棒で子宮を中からがんがんたたかれている感じとか、
ひとによって表現がいろいろ変わってくると思うけれど、
私に言わせれば、あれはもう「おなか」が「痛い」とかじゃなくて、
からだ全部が、内からの何か抗えないものすごく大きな力によってどっかもっていかれるような、
とても熱いと同時に冷や汗が出るような、全身が総毛立つような、
とにかく自分に属する肉体部分総動員の苦しみで、
なにかに例えろと言われたら・・・・
異論もあるかもしれないけれど・・・
ものすごい下痢に襲われているときの苦しみ・・・ かな。
もちろん、それのもっともっと強いものですが、苦しみのタイプが似ているかと。
まあいいや。
とにかくそういう苦しみが予想外にすこし長引くことになって、
そうこうしているうちにも赤ちゃんの頭がぐんぐん下におりてくる感触・・・!
麻酔、間に合わないかも!と不安になる。

モニターのデータ画面には、陣痛データの横に赤ちゃんの心音データ。
陣痛の波のピークのたびに赤ちゃんの心拍数もすくなくなる。
この子もがんばってる!この子に酸素を送らないと!ととにかく意識を呼吸に。

「ハイ10分経った!」とぴっちり10分後に夫が麻酔医を呼ぶように催促しにいったけれど
彼は上階で別の妊婦さんを問診中なので問診が終わるまで待つように言われ、
「麻酔打つことが麻酔医の仕事だろう!今すぐ打ち切って降りて来い!」という夫と
「問診も重要な麻酔医の仕事です!」という助産婦さんの言い争いを意識の遠くのほうで聞きながら
ひたすら息を吸い、細く吐くことに必死になっていたのですが、
そのうち、もうどうにもこうにも叫びたくなる衝動に駆られました。
ちなみに人生で「叫びたくなる衝動」に駆られたのは初めてです。
苦しみが内からぐわわぁー!と襲ってくるのと同じ感じで、
内から抗いがたい強さで声になって出てきそうな何か。
ものすごく叫びたいんだけど、しかしどう叫んでいいかわからなくて、
(ここは、「わー!」なのか、「ぎゃー!」なのか、あるいは「うおー!」なのか・・・)と考えたり、
(マンガとかの出産の場面でよく「うぎゃー!」とかみんな叫んでいるけれど、
 あれって本当なんだな!本当に叫びたくなるんだな!)と妙に冷静な自分もいて、
結局なぜか、(ここはいっそ叫ぶものか)と思いだして
痛いのと叫びたいのをひたすらに我慢しながら、早く!早く!と麻酔医を待ったのでした。
助産婦さんは無言で苦しむ私の手をとり、私の呼吸が上手だとほめながら励ましてくれました。

しばらくして麻酔医(男、推定45歳)がやたら軽く「こっんにっちは~、調子はど~お~?」と現れる。
6時20分くらいだったかな。
どうみても私はふつうにしゃべれる状態ではなかったと思うんだけど
麻酔医はおかまいなしにおしゃべりでそのうえ私に返事を求めてくるので
(こっちはそれどころじゃないんじゃい!はよ打つもん打たんかい!)と
噛み付くような気持ちで最後は無視を決め込んだけれど、
やはりこういう人に限って腕が悪いのか、背中に針をさすのを二回も失敗された。
長男のときの麻酔医は風のように来てスッと麻酔を打ちまた風のように去っていったのけど。
麻酔につかう針は、一人目妊娠のときに母親学級で実物を見て以来、
これは本番になにを間違ってもうしろは振り返ってはいけない、と強く学習済み。
ベッドの脇に座って背骨がうきでるように前屈し、麻酔医に背中をさらす。
針を刺すあいだ、からだがぴくりとも動かないように
ベッド横のいすにすわった夫とひじを組むようにして支えてもらう。
陣痛がくるたびに軽く手を上げて陣痛が来ていることを示す。
陣痛と陣痛のあいだに麻酔を行わないといけないのだけど
なにしろすでに2分間隔なのでしょっちゅう中断しては再開して、をくりかえす。
私には自分の背後で起こっていることが見えないけれど、
「おっかしいな~、ここに十分なスペースがあるんだけどな~」とか言い訳しつつ
麻酔医が二回も失敗を繰り返すのが夫には真正面に見えていたわけで、
そんな様子をみてクラクラしたのかそのうち夫の具合が悪くなってきて
私を支えきれなくなってきたので助産婦さんとバトンタッチ。
若いのにすでに恰幅のよい助産婦さんは非常にたくましく、
私を励まし、安心させ、麻酔をうけるのに正しい姿勢を導きながら支えてくれた。
三度目の正直で針はすっと入り、さらにあれこれ言い訳をしつつ麻酔医は去っていった。
「大丈夫ですか?顔色悪いですよ?」と助産婦さんは夫にオレンジジュースをもってきてくれて
夫婦でお世話になってしまう。すんません・・・
麻酔が効きにくい人もいるようだけど私には一人目のときも今回も速攻で痛みは去りました。ふぅ。

麻酔のあとは陣痛がくると痛みはないけどおなかがぎゅーっとしまる感じだけして、
赤ちゃんが降りてくる感じはあいかわらずします。
あくまでも私の感じ方で個人差はあると思うけれど。
麻酔が効いているのを確認すると、助産婦さんも
「ではまたあとでみに来ますね~」と去ってしまったけれど
もう出ちゃうんじゃないか?ポトンと落ちちゃうんじゃないか?と思うくらい
赤ちゃんの頭がぐーん!ぐーん!と出口にむかって押し出てくる感じがするので
数分後にまた出て行ったばかりの助産婦さんをまた呼び出す。
子宮口をみて助産婦さんは「あ、もうこれくらいだったら指で押したら消えちゃうかも」と言い、
こっちが「ええぇっ?指で押す!?」という疑問を投げかける間もなく
その「指で押す」というのを行ったらしく、「はーい、子宮口全開でーす」。
内線で呼ばれた私の主治医がすぐに分娩室へ降りてきて、いきみはじめることに。



その3でも生まれなかった・・・。出産記その4へ続く。
Commented by サラ at 2012-02-22 22:35 x
あはは!!
ドキドキしながら読みましたが・・・まだ生まれませんでしたね!!!(爆)
Commented by tchiguma at 2012-02-24 04:31
サラさん
生まれた子はすでに3ヶ月と3週間になるのに出産の記録はまだ終わっていないという・・・。さすがにその4では生まれるはずです!
Commented by kyotachan at 2012-02-27 01:48
ひゃあー!おもしろくなってきた!っつーか、そこまで麻酔にこだわるのって麻酔経験のないわたしににはそれが結構不思議。陣痛、ってもちろん痛いけど、でも陣風のように去れば忘れる痛みなのに。わたしも叫びましたよー!生まれたあとにそれをわびると助産婦さん、「そのくらいの痛みがないと赤ちゃんなんて生まれてこないから。昔は障子のへりがよがんで見えるほどの痛み、なーんていったそうですよ」て笑っていましたっけ。そのくらい痛いのに(ほんとほんと、その痛みの表現は数知れずありますよね)過ぎ去ったとたん、ああ、また生みたい、て思ってしまうのもこれまた不思議な痛みのゆえん。あれを避けようとするフランス方式って一体なんなんだろう。わたしとしてはもったいないようなはがやゆいような。まあ無事に生まれてくればなんだっていいんだろうなあとも思いますが。
Commented by sa at 2012-02-27 04:14 x
ああ・・・ううう・・・こわい。無痛分娩って無痛じゃないのね・・・。
Commented by tchiguma at 2012-02-27 04:50
kyotachanさん
麻酔はですねー、今回の出産の後悔ポイントなんですよ!麻酔の先生を待っている間も、このまま最後までいけるんじゃないかという考えもちらついたのですが、最後の押し出すところの痛さが想像つかなかったのでやっぱりお願いしました。でも出産後、日本の友達にも、最後の赤ちゃんがでてくるときはそんなに痛くない、そこまでがんばったなら麻酔なしでもよかったかもねと聞いて、まあ眠れなくなるほどではないですが麻酔なしで産んでみたかったなと後悔しました。しかも2回失敗されたのが痛かったので余計に!!!麻酔失敗でへんな後遺症がでるのも怖いですしね!!ああ、もう一回、出産を経験してみたいなあ!今度は麻酔なしで。
Commented by tchiguma at 2012-02-27 04:53
saさん
いや、無痛分娩はわたしにとっては無痛だったよ。効きにくい人もいるらしいけど。針はスッとはいるときは全然痛くないし。失敗されたときは痛かったけど。でも針刺すの失敗されたなんてまわりでも聞いたことないしあんまりないと思うよ!あのヤブ医者め!
Commented by もな at 2012-02-27 17:13 x
ちぐまさんの「実況」を読んで、10年前の記憶がまざまざと蘇ってしまいましたー。私からみれば、最後のほうでも麻酔を打ってもらえて(というか、分娩室に移してもらえて!)ラッキーでしたよ。こっちの病院って、分娩室が空かない、麻酔医や産科医が取り込み中、なんてことは日常茶飯事だったのね…と、「ますい~~~~ますい~~~~~」と雄叫びを上げながら最後まで麻酔してもらえず、結局陣痛室で出産させられた私は悟ったのでした。
それにしてもあの痛み…私のは、「地球が壊れる」という感覚でしたね。なんというか、自分が世界と同化してしまって、世界そのものが爆発するーという感じ。あまりにも衝撃が大きくて、「もう一回やりたい」とは遂に思いませんでした。(今でも思ってません・笑)
Commented by tchiguma at 2012-02-28 05:21
もなさん
わたしと同じ時期に出産した友達も、彼女はCHUだったんですが病院側の人手不足で麻酔を打ってもらえなかったそうで怒っていましたよ。これ以上叫べない、ていうくらい叫んだとも。あてにしていたサービス(?)が土壇場になって受けられないってショックですよね。
「地球が壊れる!」「世界が爆発する!」ですか!夫にもなさんのコメント読んでもらいたいわ~。私ももし麻酔が間に合ってなかったらもう一人産みたいなんて考え頭にないのかしら?
by tchiguma | 2012-02-22 06:06 | フランスで妊娠・出産 | Comments(8)